【総評】 坂本雄三委員長 関心の高さはあったようだが、敷地条件が難しかったのか、実際に提出された応募作品が少なかったのは残念。外皮性能の工夫より、個性が発揮される意匠的、建築計画、住まい方の設計提案に、いつも期待をしている。断熱の考え方の浸透はまだまだ不十分なので、今後もこういった設計コンペを継続していきたい。
【環境デザイン上の観点から】 鈴木大隆主査 3作品とも概ねG2水準を満たすものと推定される。AE-Sim/Heatで再現できる部分を出来る限りモデル化してシミュレーションした結果、暖房負荷(EB)は平成25年基準レベルと比べ約30~50%減少、冬のNEBはHEAT20 G2グレードシナリオに対して概ね満足し、夏のNEBは平成25年基準レベルと比べ極端な悪化傾向はなかった。
【建築計画上の観点から】 服部郁子建築家委員 密集住宅街での計画のあり方、敷地特性や住まい手への応え方、法規の適合性、提案性、デザイン性等について総合的に評価した。狭小敷地では1階の居室の有効採光面積を確保するのが難しい。窓は、外皮性能や採光・通風と密接に関わるが、形状や配置なども合わせて考え、法規と両立する工夫が必要である。
[ 設定地域 ] : 東京・多摩地域の住宅密集地 ●最小限の空間が最大限の省エネルギー 昨今の異常気象を考えると暖房負荷は元より夏期の冷房負荷は日常的に必要であると考えられます。ただし季節ごと一日の気温の変化を考えると冷暖房補助が必要な時間は限られてくると考えます。そこで私たちが考える住宅は冷暖房負荷を減らすために家族構成に合った無理のない最小限のLDK空間を用意し、必要な時に必要なだけの空間操作・制御ができる仕組みが最も効率の良い省エネルギー対策になると考えました。 ●自然エネルギーを生かすこと=基本性能 自然エネルギーを最大限活用し、冷暖房負荷を限りなく減らすことがこれからの住宅に求められる基本性能と考えます。冬期:ロフト集熱と縁側集熱が暖房負荷の軽減に期待できます。夏期:庭空間と土間空間にかけて冷やされた空気が居間に運ばれることにより冷房負荷の軽減が期待できます。
空気や熱の流れをさまざまのシーズンで考えられているコンパクトな間取り。今回の応募作品に緩衝空間の提案が多かった。緩衝空間は狭小敷地の場合、住宅の狭さが強調される傾向にあるが、本作品は、季節に応じて融通性を持たせている点が評価できる。